人間の脳資源は有限であることが発話音声分析からも確認

人間の可能性は無限であっても,人間の脳資源は有限です。電子航法研究所の関った発話音声分 析実験においても,脳資源の配分に関係すると考えられる結果が幾つも確認されています。

doc-26リーデイング・スパンテスト(RTS )は人間の短期記憶(ワーキング・メモリ)を評価するテストです。① 「商品はきれいに包装して,お客様に渡します。」 や「私の国では大規模な災害に備えて食料を貯蔵しています。」の様な単文が朗読カードとして用意されていて1枚ずつ呈示されます。②被験者はその単文を読 みながら赤色で書かれた単語(目標語)を覚えます。 ③単文は予め設定されている枚数(2~5枚)表示され,次に白紙が示されると,被験者は朗読中に覚えた目標語を思い出して発話します。

右の写真は武蔵野大学における実験風景です。手前の被験者はディスプレイに表示され る単文を朗読し目標語を覚えます。奥の実験者は単文の表示を操作し被験者が思い出した目標語をチェックします。実験では,先ず電子航法研究所で作成した単 文を朗読し(E1) ,次に指定枚 数2枚でRST の練習を行い(練習),続けて指定枚数2枚(R2), 3枚(R3), 4枚(R4), 5枚 (R5)と RST を行い,その後で再度当所で作成した単文を朗読し(E2)音声を集録しました。

実験では, RSTの負荷を評価するために, RSTと同様な課doc-27題を単に朗読した音声も RSTの場合と同様に集録 (M1~M5 )しました。右の表は 8人の被験者(Ⅰ~Ⅷ)による上記実験結果を集計したものです。 表の数値は個 別のE2 朗読によるCEM値の平均値と標準偏差で正規化されています。 下のグラフは95%信頼区間と平均値を示しており,単純朗読よりもRST によるCEM値の方が小さくなっていることが理解されます。発話に係る脳資源の一部が目標語を覚えようとする作業に振り向けられた事により、CEM値が比 較的に小さくなったと思われる訳です。

上記は朗読音声によるCEM値の変化を観測したものですが,テストコースでの実車走行実験や鉄道営業運転における調査においても,運転操作等の作業負担が大きくなった状況では,喚呼発話音声から算出されるCEM値が小さくなる現象が確認されています。