作業負担が大きくなった状況では,CEM値が小さくなる

今日,航空管制官とパイロットは無線電話で交信していますが,近い将来には複雑な管制指示の発出等にCPDLC (Controller Pilot Data-Link Communication)と呼ばれるデータ通信が導入されることが決まっています。もっとも, CPDLC が導入されても,様々な意味で利用し易い音声通信が無くなる訳ではなく(航空機が対応していればですが)管制官はどちらでも使い易い方を使うことができる 様になる訳です。

doc-28電子航法研究所では管制官の利用する業務 機器の開発やそのユーザ・インタフェースの評価等も行っており,その一環としてシミュレーション実験によりCPDLC導入の及ぼす影響を調べました。シ ミュレーションは CPDLC対応機の割合が 0%, 30%, 80% と増えた場合に「音声通信時聞がどの様に減るか?」を調べるためのものでしたが,その時の管制業務通信音声を当所の発話音声分析技術で分析すると(成果資 料6:人間の脳資源は有限であることが発話音声分析からも確認)と整合する結果が得られました。

写真はシミュレーションの実施状況を業務作 業者の後ろから撮影したものです。また,本来の評価目的としたシミュレーション結果は下図の説明において述べる通りで,その結果に疑問はないと思います。 興味深いのは,管制業務通信音声を分析した下の右図に示す結果です。CPDLC対応機の割合が30%の場合に,他の割合の場合に比較して有意にCEM値が 低下しています。どのシナリオでも実験中に眠くなる様な状態は考えられませんから(成果資料 6:人間の脳資源は有限であることが発話音声分析からも確認)の場合と同様に, CPDLC対応機が30%の場合には,大脳資源が発話以外の(思考に係る)機能野により多く配分された結果,他の割合の場合に比較して発話に係る機能野 (ブローカ野)に配分される資源が少なくなり,その結果としてCEM値が低下した、と考えられる訳です。 管制官は 「確かに CPDLC 機が 30%の場合には,データ通信と音声通信の選択に混乱する。 」とシミュレーション後のインタビューで語っています。doc-29

デー タ通信は航空機シンボルに対してポップアップするメニューを利用して行います。メニューの階層を辿り,管制指示としてのCPDLCメッセージを作成するこ とができます。この例では ADO12 *便に対して190°方向への飛行を指示するメッセージが作成されます。従来音声通信で行われていた管制指示がデータリンクにより送られる様になれば,当 然の事ながら音声通信時間は低減されます。CPDLC対応機の割合が大きければ通信時間の低減効果も当然に大きくなり,全く予想通りの結果です。