職業性ストレス簡易調査票「心身のストレス反応」

Dr.Nonoは、音声分析時の「気分」や「愁訴」を入力してもらうことで、ユーザー自身の心身の状態を判断する情報の一つとしてご活用頂けるよう考えています。

Dr.Nonoで入力頂く「気分」は、労働安全衛生法に基づき2015年12月1日に施行された「ストレスチェック制度」にて使用されるストレスチェック調査票(57問式の”職業性ストレス簡易調査票”:旧労働省の研究成果である現在最もポピュラーな働く人々のためのストレス調査票)の中の、「心身のストレス反応」の29項目(以下)を指標として使用しています。職業性ストレス簡易調査票では、最近1ヵ月間の状態について全項目について「1:ほとんどなかった」「2:ときどきあった」「3:しばしばあった」「4:いつもあった」の4段階で回答しますが、Dr.Nonoでは、診断時のいまの状態に最も該当する項目を1つ選択するようにしています。

※「心身のストレス反応」の29項目のうち、1~18は、気分・感情の項目で、19~29は、身体的愁訴(つらい訴え、症状)です。

どの項目にも当てはまらない場合には、”どれにも当てはまらない”を選択して下さい。(どれも選択しなかった場合は、システムが自動的に”どれにも当てはまらない”を選択しています。)

《気分(心身のストレス反応)一覧》

  1. 活気がわいていくる   活気感
  2. 元気がいっぱいだ     〃
  3. 生き生きする        〃
  4. 怒りを感じる        イライラ感
  5. 内心腹立たしい       〃
  6. イライラしている       〃
  7. ひどく疲れた       疲労感
  8. へとへとだ          〃
  9. だるい             〃
  10. 気がはりつめている   不安感
  11. 不安だ            〃
  12. 落着きがない        〃
  13. ゆううつだ         抑うつ感
  14. 何をするのも面倒だ    〃
  15. 物事に集中できない    〃
  16. 気分が晴れない       〃
  17. 仕事が手につかない    〃
  18. 悲しいと感じる        〃
  19. めまいがする       身体的愁訴
  20. 体のふしぶしが痛む     〃
  21. 頭が重かったり頭痛がする 〃
  22. 首筋や肩がこる        〃
  23. 腰が痛い            〃
  24. 目が疲れる           〃
  25. 動悸や息切れがする     〃
  26. 胃腸の具合が悪い      〃
  27. 食欲がない          〃
  28. 便秘や下痢をする      〃
  29. よく眠れない          〃
  30. (どれにも当てはまらない)

ヒューマンエラー撲滅に向けて

航空機事故、鉄道事故、海運事故、交通事故、身の回りの様々な運輸事故は、ほとんどの場合、操縦者、運転者のヒューマンエラーが係わっています。ヒューマンエラーは肉体的・精神的疲労や眠気、心身状態の変化などの影響によると考えられ、私たちは人の発話音声で疲れや心身状態を診断しようとしています。

CEM 値の変化とサーカディアンリズム(体内時計)の影響を確認

doc-30  航空管制業務等のシフト勤務の業務作業負担を音声から算出するCEM値で評価しようとすれば,予めCEM 値が体内時計から受ける影響(サーカディアンリズムとの相関関係)を明らかにしておくことが必要です。そこで, CEM値にサーカディアンリズムが反映されるか否かを確認するために 1日を 21 時間とした生活(14時間起きて7時間の睡眠を取ることを繰返す生活)を8日間継続する実験を行いました。実験は斑尾所在 の右のロッジを借りて全ての窓を塞いで、遮光しテレビや時計等の時刻の分かるものも全て撤去して,外界と遮断した環境を作り,被験者4 人が実験者8人と閉じ篭って行いました。起きている14 時間の聞には1時間毎に航空管制業務の作業要素(ディスプレイの監視,音声による問題の呈示に対する音声での応答,ディスプレイ上の目標の探索)を取入れ た作業を行い作業中の発話を収録しました。他の音声収録実験と同様に,作業の前後には朗読音声を集録しまた臨界フリッカー周波数,心拍数,血圧等を計測し 質問紙による調査を行い,主観的な眠気と疲労感を VAS (Visual Analog Scale )により記録しました。doc-31

上図は作業パフォーマンス(E.A.P.: Easy Arithmetic Performance)と作業の前後に集録した朗読音声によるCEM_Reading値(有効被験者数は4)の平均値,またE.A.P. とその作業発 話によるCEM_Callout値(有効被験者数は3)の平均値を世界時間に対してプロットしたもの です。 E.A.P. の変化のパターンは,明け方とお昼過ぎに,また深夜に向かつて低下しておりサーカディアンリズムと良く似た変化を示しており, CEM_Reading 値の変化の傾向と CEM_Callout値の変化の傾向も E.A.P. の変化に似たパターンを示しています。 特に「いろは歌」 のCEM_reading 値の変化と E.A.P. の変化との相関係数は0.65 以上であり, CEM値の変化はサーカディアンリズム(体内時計)の影響を受けていると考えられます。

作業負担が大きくなった状況では,CEM値が小さくなる

今日,航空管制官とパイロットは無線電話で交信していますが,近い将来には複雑な管制指示の発出等にCPDLC (Controller Pilot Data-Link Communication)と呼ばれるデータ通信が導入されることが決まっています。もっとも, CPDLC が導入されても,様々な意味で利用し易い音声通信が無くなる訳ではなく(航空機が対応していればですが)管制官はどちらでも使い易い方を使うことができる 様になる訳です。

doc-28電子航法研究所では管制官の利用する業務 機器の開発やそのユーザ・インタフェースの評価等も行っており,その一環としてシミュレーション実験によりCPDLC導入の及ぼす影響を調べました。シ ミュレーションは CPDLC対応機の割合が 0%, 30%, 80% と増えた場合に「音声通信時聞がどの様に減るか?」を調べるためのものでしたが,その時の管制業務通信音声を当所の発話音声分析技術で分析すると(成果資 料6:人間の脳資源は有限であることが発話音声分析からも確認)と整合する結果が得られました。

写真はシミュレーションの実施状況を業務作 業者の後ろから撮影したものです。また,本来の評価目的としたシミュレーション結果は下図の説明において述べる通りで,その結果に疑問はないと思います。 興味深いのは,管制業務通信音声を分析した下の右図に示す結果です。CPDLC対応機の割合が30%の場合に,他の割合の場合に比較して有意にCEM値が 低下しています。どのシナリオでも実験中に眠くなる様な状態は考えられませんから(成果資料 6:人間の脳資源は有限であることが発話音声分析からも確認)の場合と同様に, CPDLC対応機が30%の場合には,大脳資源が発話以外の(思考に係る)機能野により多く配分された結果,他の割合の場合に比較して発話に係る機能野 (ブローカ野)に配分される資源が少なくなり,その結果としてCEM値が低下した、と考えられる訳です。 管制官は 「確かに CPDLC 機が 30%の場合には,データ通信と音声通信の選択に混乱する。 」とシミュレーション後のインタビューで語っています。doc-29

デー タ通信は航空機シンボルに対してポップアップするメニューを利用して行います。メニューの階層を辿り,管制指示としてのCPDLCメッセージを作成するこ とができます。この例では ADO12 *便に対して190°方向への飛行を指示するメッセージが作成されます。従来音声通信で行われていた管制指示がデータリンクにより送られる様になれば,当 然の事ながら音声通信時間は低減されます。CPDLC対応機の割合が大きければ通信時間の低減効果も当然に大きくなり,全く予想通りの結果です。

十分な頻度で繰返される短い発話音声から覚醒度の低下を検出

発話音声による覚醒度の評価可能性検証のために,抗ヒスタミン剤の服用により眠気を誘発した実験を実施しました。実験では, 4人の被験者が,第一世代の抗ヒスタミン剤を午前10時に服用しその後は水分の補給だけで午後5時まで,30分毎に簡単な暗算課題を3分間行いその作業音 声を収録しました。またその前後に朗読音声を集録し臨界フリッカー周波数,心拍数,血圧を計測し主観的な眠気と疲労惑をVAS(Visual Analog Scale)により記録しました。暗算で、はパソコンのディスプレイに表示される問題に対して音声で、回答し,朗読音声は「いろは歌」48文字を12文字 ずつに4分割して,これをランダムな順番で表示し読んで収録しました。下の3つの図は上から,4人の被験者の平均値としての,経時的な主観的な眠気の強さ の変化,作業発話(暗算の回答音声)から計算されるCEM_Callout値の変化,朗読音声から計算されるCEM_Reading値の変化を示していま す。 時間経過を示す横軸は,朗読音声の収録とその後の自覚的な眠気の申告の回数毎に一目盛り進む様に描かれています。10:00 のプロットは10:00に計測した値ですが,その右のプロットは10:05~10:10 に計測された値です。doc-32

服用から眠気を感じるまでの時間や,薬の効果が継続している時間には被験者間に個人 差は当然に有ったと考えられますが, 11時(服用後1時間)から14時頃までの間,一般的な服用上限の3錠の服用により,被験者は平均的に強い眠気を感じていたと考えられます。14時以降においてはグラフに変動が目立ちますが,服薬の効果が切れたのか?或いは 実験の単調さや疲労に依るものが重畳しているのか?については,判断はできません。 この実験結果からは,作業中の短い発話音声であっても十分な頻度で繰返される場合には,その音声から発話者の覚醒度の低下を検出ことができそうです。

人間の脳資源は有限であることが発話音声分析からも確認

人間の可能性は無限であっても,人間の脳資源は有限です。電子航法研究所の関った発話音声分 析実験においても,脳資源の配分に関係すると考えられる結果が幾つも確認されています。

doc-26リーデイング・スパンテスト(RTS )は人間の短期記憶(ワーキング・メモリ)を評価するテストです。① 「商品はきれいに包装して,お客様に渡します。」 や「私の国では大規模な災害に備えて食料を貯蔵しています。」の様な単文が朗読カードとして用意されていて1枚ずつ呈示されます。②被験者はその単文を読 みながら赤色で書かれた単語(目標語)を覚えます。 ③単文は予め設定されている枚数(2~5枚)表示され,次に白紙が示されると,被験者は朗読中に覚えた目標語を思い出して発話します。

右の写真は武蔵野大学における実験風景です。手前の被験者はディスプレイに表示され る単文を朗読し目標語を覚えます。奥の実験者は単文の表示を操作し被験者が思い出した目標語をチェックします。実験では,先ず電子航法研究所で作成した単 文を朗読し(E1) ,次に指定枚 数2枚でRST の練習を行い(練習),続けて指定枚数2枚(R2), 3枚(R3), 4枚(R4), 5枚 (R5)と RST を行い,その後で再度当所で作成した単文を朗読し(E2)音声を集録しました。

実験では, RSTの負荷を評価するために, RSTと同様な課doc-27題を単に朗読した音声も RSTの場合と同様に集録 (M1~M5 )しました。右の表は 8人の被験者(Ⅰ~Ⅷ)による上記実験結果を集計したものです。 表の数値は個 別のE2 朗読によるCEM値の平均値と標準偏差で正規化されています。 下のグラフは95%信頼区間と平均値を示しており,単純朗読よりもRST によるCEM値の方が小さくなっていることが理解されます。発話に係る脳資源の一部が目標語を覚えようとする作業に振り向けられた事により、CEM値が比 較的に小さくなったと思われる訳です。

上記は朗読音声によるCEM値の変化を観測したものですが,テストコースでの実車走行実験や鉄道営業運転における調査においても,運転操作等の作業負担が大きくなった状況では,喚呼発話音声から算出されるCEM値が小さくなる現象が確認されています。

カオス論的 発話音声分析装置:CENTE(センテ)

電子航法研究所は CENTE と名付けた発話音声分析装置を試作開発致しました。 CENTE はトースターくらいの大きさで,タッチパネルによる操作で音声の収録を行 い,その分析結果(CEM: Cerebral Exponent Macro )を表示する事ができます。doc-24

CENTE には音声を収録するために,日本昔話を題材として十秒くらいで読める「朗 ’ 読カード」が用意されています。 「朗読カード」は誰でも作る事ができます。

下 図は 50 代の男性が,日常的に,思い立った時に,毎回 1枚ランダムに表示される 「朗読カード」を読んで収録した音声の処理結果です。 青い点は毎回の朗読音声から 計算された CEM値を示しており, 赤い線は 2時間の移動平均値です。縦軸は平均値を 0.0 に,標準偏差を 1.0 に正規化した値です。横軸は音声の収録時刻です。doc-25

出 勤直後に収録した音声からは比較的に高い CEM 値が,昼食後には比較的に低い CEM値が計算されています。また,夕食後にも低い CEM値が多く見られます。 将来的には,日常的に音声を収録する事で,その個々人の生活リズムと,その時々 のコンディションが分かる様になるかも知れません。

現在当所では,サーカヂィアンリズムの影響を評価する実験も行っています。

発話音声の分析で居眠りを起こす可能性の上昇を検出

doc-21居眠りが原因の交通事故の防 止は未だ解決されていない重要な社会問題です。電子航法研究所の発話音声分析技術により運転手さんの発する声を分析すれば,居眠りを起こす可能性の上昇を 検出することが可能です。 苫小牧トラック協会の会員運転手の皆さんにご協力いただき 以下の検証実験を行いました。 また,実験に使用したトラックはいすゞ自動車さんからご提供いただきました。ご協力いただきました方々に感謝致します。

下図の様な1周 2.7km のテストコースで周囲走行を行いながら,運転手の皆さんには①~④のチェック・ポイントを通過する時に「O番通過,速度良し! 」と発話していただき,運転業務中の音声を収録しました。doc-22

1) 実験では,午前7時過ぎから 50分走って 10分休む走行を繰返しました。

2)4tトラックで時速40km での定速運転を行いました。

3)午前中に食事はせずに水分補給だけで5時間走りました。

4)午前中は次第に指数値が低下している様子が観測されています。doc-23

5)昼食の後では,暫くすると急激に眠気に襲われて行く様子が観測されています。

6)発話音声分析装置は最上流の予防安全装置として利用可能です。

発話音声をカオス論的に処理すると覚醒度に相関する指数値が得られる

発話音声をカオス論的な手法により処理すると、発話者の覚醒度に良く相関する指数値(CEM:Cerebral Exponent Macro)を得ることが可能です。doc-19  3日間の運転練習をした被験者は、4日目の朝に健常状態でのデータを収録し、午後は宅配便運転者の荷積み作業に相当する作業を行って、夕方から翌朝まで約 10分間の運転作業を40回繰り返し、作業中の喚呼音声(「出発進行」、「閉塞進行」、等々)と、作業の合間の朗読音声(10秒程度の朗読を3コマ)を収 録しました。

下図の実験結果では、連続的な運転作業により朗読音声から計算されたCEM(Reading)値が次第に低下して行く様子が観 測されています。逆に、この被験者においては、運転作業中の喚呼音声から計算されたCEM(Callout)値は上昇しています。副作業としての発話音声 によるCEM値は発話環境の影響を強く受けます。doc-20 より消耗が著しかった別な被験者による実験結果から、疲れ切ってしまえばCEM(Callout)値も低下することが確認さています。

発話音声をカオス論的に分析し大脳新皮質の活性化状態を定量的に評価

発話音声をカオス理論により分析することで、発話者の大脳新皮質の活性状態が定量的に評価できることが実験的に確認されています。電子航法研究所では、その指数をCEM(Cerebral Exponent Macro)として定義しました。

doc-16カ オス論的な信号処理においてが、右図の様にマイクロフォンに発生する音声信号電圧から、ストレンジ・アトラクタと呼ばれる図を生成(数学的には再構成と呼 びます。)して、これを評価します。ストレンジ・アトラクタは人間の目には何か意味を有する様に見える形状を有しており、何等かの軌道が揺らいでいる様な 印象を与えます。実験的には、この視覚的な印象としての”ゆらぎ”を定量的に評価した指数値(CEM値)が、その発話者の大脳新皮質の活性度と相関するこ とが確認されています。活性度が高い場合には、”ゆらぎ”は大きくCEM値は比較的に大きな数値となり、消耗して余裕を失ってしまっている様な場合には逆 に”ゆらぎ”は小さくCEM値は比較的に小さな数値となります。

doc-17  右図は、些細なストレスがCEM値を変化させることを確認した実験結果を示しています。被験者は先ず「普通に、葉書大のカードに書かれたテキストを読 み」、次に「右手人差し指で自分の右耳を塞いで同様にテキストを読んで」います。被験者AのCEM値は、普通に朗読した時には460でしたが、耳を塞いだ 場合には580に上昇しています。殆どのプロットが、右図y=x線の上側に存在していることは「耳を塞ぐことに因るストレスが大脳新皮質に負荷として作用 しCEM値が大きくなった」ことを示しています。

下図は対話音声を分析した結果ですが、経過時間250秒、650秒、1,000秒の位置に質問者のCEM値に山状の変化が観測されています。この時刻は、質問者が先の質問を総括して、予め用意している次の質問を開始した時刻と正確に一致することが確認されています。doc-18

発話音声から発話者の緊張や弛緩を評価することは今日既に可能なのです。