プロジェクト

世の中には予想ができることと、予想ができないことが様々存在します。予想ができることとできないことがなぜ起こるのでしょうか。予想ができないことをカオスであるとか、カオス的であるということがあります。予想ができる、できないということは、カオス度の差、カオスの度合いの違いなのかもしれません。

SiCECAは、なかなか測ることができない人間の喜怒哀楽や気分、疲労感、眠気もしくは覚醒度、病気の進行状態、老化の程度などを、人間の発話音声をカオス論的に解析し、数値化することで、その「カオス度」を指標として定量的に表わそうという音声解析ソリューションです。

SiCECAは、SiCECAテクノロジーを使い、スマートフォンやタブレット、パソコンなど身近なITデバイスを高機能なカオス論的音声解析システムとして提供します。

  1. SiCECAとは
  2. カオス論的音声解析のはじまり
  3. 発見そして進化
  4. さまざまな応用の可能性
  5. 実証実験

  icon-volume-up SiCECAとは

SiCECA(Shiomi’s Cerebral Exponent Calculation Algorithm)は、「シセカ」と読みます。

SiCECAは、「発話音声の様な強い周期性を有する信号のカオス性とランダム性を高速に分離評価する信号処理手法」の”アルゴリズム”のことです。このアルゴリズムを 使ったコンピュータソフトを使えば、発話音声ファイルを入力してその音声のカオス性とランダム性を分離し、カオス性のレベルから発話機能の堅牢性を,ランダム性のレベルから「脳の活性度」を評価することができます。


  カオス論的音声解析のはじまり

それは、飛行管制業務やパイロットの仕事からヒューマン・エラー(人が原因で起こるあやまり)を、どのようにしたら減らせるかという研究から始まりました。

ヒューマン・エラーはどのような時に起こりやすいか。業務に集中できない、何かに気をとられている、他のことを考えている、いわば注意力が散漫になっているとき。疲労(疲れ)や眠気を感じるとき。

「疲れ」を定量的に数字で表現できないものか。しかも、本来の仕事を邪魔しない方法で。

独立行政法人(現:国立研究開発法人) 電子航法研究所 上席研究員の塩見 格一(しおみ かくいち)氏は、しゃべっている声がその時の頭脳の状態を現す何かを含んでいるのではないかと思いつきました。フーリエ変換法などでその周波数情報と音量 のみを解析してあとは捨てていた音声データにまだ極めて有効な情報が残っていることが分かったのです。

カオス数学を使用して解析することにより、声のカオス性に加わっているノイズ(声に加わるまわりからのノイズではなく、脳から出る指示に加わるノイズ)の量が、どうも脳の「疲れ」と強い相関を持っているようだと。
その後の研究で、このノイズの量こそが脳の疲れなどの状態を現す「脳活性度」と言ってよいのではないかという理論(略して「塩見理論」)を確立しました。

SiCECAはこの脳活性度指数(CEM)を効率良く計算するためのコンピュータアルゴリズムです。


  発見そして進化

電子航法研究所は,発話音声を分析すれば発話者の心身状態の評価できる可能性を確認しています。 この現象は, 1998 年に塩見格一研究員が(株)オージス総研に依頼した「発話音声のカオス 性の変化に係る調査」において広瀬尚三氏(現アイヴィス)により発見されました。当時公表された最初の新聞記事が以下です。

doc-6記事では「波形 の不安定さ」と表現されていますが,「ゆらぎの程度」と考えても同じです。また,記事では,「疲労の蓄積と共に不安定さが増す(ゆらぎが大きくなる)。」と書かれていますが, 現在では 「(言う程には単純ではないのですが)一生懸命話そうとするとゆらぎが大きくなると理解した方がより正しいと考えられています。

以来電子航法研究所は,この技術の実用化を目指して,オージス総研,三菱スペース・ソフトウエア (株),東京医科歯科大学,東北大学,(財)鉄道総研,等々に協力を求めながら,共同研究 として,時に委託研究として研究開発を進めて来ました。共同研究のパートナーは年月と共に交代していますが,この状況は 2016 年現在でも変ってはいません。

カオス論的分析では、「ゆらぎの程度」を最大リアプノフ指数を計算し、その指数値の正負によりカオス性の有無を判定します。音声信号の分析において、当初は佐野澤田のアルゴリズム等を形式的に適用して最大リアプノフ指数を計算していましたが、音声信号の複数の母音はそれぞれ異なる生成ダイナミックスを有しているので、一つの母音を数秒継続して発話した様な場合を除けば、近似としても最大リアプノフ指数では適当ではないことが分かりました。ゆらぎを評価するためには,ストレンジ・アトラクタが視覚的に一定の形状を再 構成している様に見える時聞が(短くても)百ミリ秒程度は継続していることが必要です。当時,カオス 論的な発話音声分析技術の実用化のためには演算処理時間の短縮が最大の課題でした。 そこで,一般的な時系列信号を対象とするものではなく, 強い周期性を有する音声信号の特徴を利用して音声信号の処理を高速化するアルゴリズム(SiCECA: Shiomi’ s Cerebral Exponent Calculation Algorithm )を考案しました。米国製 CRAY-MTA2 (シリアル番号 2番の初号機)上に実装されたSiCECAにより, 2002 年に,初めて 1秒間の音声データを1秒以内に処理することが可能となり,その後の研究開発の効率が著しく改善されました。

そして、SiCECA(Shiomi’s Cerebral Exponent Calculation Algorithm) により音声信号を処理す れば,処理パラメータの設定,音声データの信号雑音比,等々の幾つかの条件が十分に適正であれば発話者の覚醒度に相関する指数値を計算する事ができるようになりました。(ただし、全ての条件が適正でなければ何時でも発話者の覚醒度に相関する様な指数値が計算できる訳ではありま せん。例えばラジオで或る放送に同調すればその放送が,別な放送に同調すれば別な放送 が聴ける様に, SiCECAの実装は形式的な処理手続型プログラムで,覚醒度評価に適正な パラメータの設定がなされた場合に,音声から発話者の覚醒度に相関する指数値がCEM (Cerebral Exponent Macro)値として算出可能となるのです。)

2016年現在、コンピュータの性能や通信ネットワーク技術が向上し、スマートフォンやタブレット、パソコンなど身近なITデバイスを高機能なカオス論的音声解析システムとして提供できるようになりました。


  さまざまな応用の可能性

音声信号のカオス論的処理を高速化するアルゴリズム(SiCECA: Shiomi’ s Cerebral Exponent Calculation Algorithm )の発明(考案)と高性能化したコンピュータは、CENTE(センテ)と名付けた「カオス論的発話音声分析装置」を生み、様々な状況下でも比較的容易に発話音声の解析が行えCEM値を得られるようになりました。

一般的に使用されるリーディング・スパンテスト、TSST(Trier Social Stress Test)などのストレス評価テストとの比較、坑ヒスタミン剤の服用時と否服用時の覚醒度比較、CEM値の変化とサーカディアンリズム(体内時計)の影響確認など様々な実証実験を重ね、CEM値の心身状態等の変化計測指標としての有効性もしくは可能性、期待性を確認してまいりました。

 そして、高速回線ネットワークを活用したスマートフォン等のモバイル端末を利用したカオス論的音声解析支援アプリケーションとして「Dr.Nono」を開発し、様々な場所、様々な人々、様々な状況下で簡易に発話音声分析技術を使った検査が行えるようになりました。覚醒度、疲労度のみならず、ストレス社会と呼ばれる現代人の様々な心身状態の変化計測にカオス論的音声解析(CEM値)をご利用できるようにしました。


  実証実験

電子航法研究所は、1998年に時系列信号としての発話音声からターケンスの埋込み定理により再構成される音声のストレンジ・アトラクタの最大リアプノフ指数が,発話者 の心身状態に対応して変化する様に見える場合が有ることを発見して以来今日に至るまで、カオス理論に基づく人間の発話音声分析技術に係る研究開発を続けています。それは発見(気づき)と仮定(仮説)と実証と新たな発見の連続です。

最近までの研究で、わかってきたこと、確認できたことは、HOME>テクノロジー>成果資料の中にいくつかまとめてありますのでご一読ください。

  • 発話音声を分析し発話者の心身状態を評価
  • 電子航法研究所の発話音声分析技術は、音声信号のカオス性評価
  • リアプノフ指数値の正負によりカオス性の有無を判定
  • CE(Cerebral Exponent)の定義により音声信号のゆらぎの定量化が可能に
  • 適正な処理条件で発話者の覚醒度に相関する指数値が計算可能に
  • 「パラメータの適正な設定」が有意味な CEM値の算出に必要不可欠
  • 5秒間の発話音声があれば信頼できるCEM値が計算可能
  • 疲労の蓄積により音声の「ゆらぎ」が小さくなる
  • 発話音声をカオス論的に分析し大脳新皮質の活性化状態を定量的に評価
  • 発話音声をカオス論的に処理すると覚醒度に相関する指数値が得られる
  • 発話音声の分析で居眠りを起こす可能性の上昇を検出
  • カオス論的 発話音声分析装置:CENTE(センテ)
  • 人間の脳資源は有限であることが発話音声分析からも確認
  • 十分な頻度で繰返される短い発話音声から覚醒度の低下を検出
  • 作業負担が大きくなった状況では,CEM値が小さくなる
  • CEM 値の変化とサーカディアンリズム(体内時計)の影響を確認

(参考:体温計にまつわるお話) ■1609年、イタリアの医学者サントリオ1561~1636)が、ガリレオによる気体の熱膨張を応用した温度計に触発を受けて作られたのが、世界初の体温計。蛇行するガラス管の一方を球型に加工し、もう一方を水入りの容器に入れるという単純な構造のもので、ガラス球を口に含むことで内部の空気が膨張し管内の水位を押し下げる度合いを目盛りで読み、それで体温を測りました。それまでは手のひらの感覚だけで体温をみていましたが、サントリオは数量的に把握しようとしたのでした。しかし、このときはまだ正確には測定できず、その臨床的意義もあいまいなものでした。■サントリオの体温計にも目盛りはついていましたが、温度計ごとに勝手につけた目盛りでした。それでも、その温度計を使っていろいろな人の体温を測っていくうちに正常の人間はいつも一定の体温を保つことに気づきました。これが正確に計測されるまでにはさらに1世紀以上の歳月を要しました。■1691年カルロ・ リナルディが沸点を見つけ、それまでにわかっていた氷点とを基準にして目盛りが作られるようになりました。■1714年、ドイツの物理学者G.D.ファーレ ンハイトが革袋でこした水銀を使った華氏温度計を発明、これを使って人間の体温は華氏96度(摂氏35.6度)であることを見つけました。■日本人の平均体温は36.89℃ということになっています。これは1957年に、東京大学の田坂定孝教授らが、10〜50歳代の3094人(男性1445 人、女性1649人)の健康な方の体温を計測した結果です。水銀血圧計を用い、腋窩体温を30分以上かけて正確に測定しました。この結果、健康な日本人の平均体温は、36.89℃を中心とした36.55~37.23℃ということになりました。